ご門徒の故郷のお寺を紹介します
坂東市 Y.N.さんよりご紹介いただきました
碧祥寺(岩手県西和賀町)

碧祥寺は、東北山脈に連なる日本二百名山(NHK花の百名山)の一つ、和賀岳(1,440m)の麓、岩手県中央部の和賀郡西和賀町沢内太田にあります(西和賀町は平成に旧沢内村と湯田町が合併して誕生しました)。
この地域は岩手県内でも有数の豪雪地帯であり、1.5m以上の積雪となり、4月初めまで残雪が見られます。碧祥寺は1625年(寛永2年)、多田禅正源延清という武士が出家し、沢内村前郷に草庵を結んだのが始まりとされています。
本堂では、大壁画や写経画、インドやネパールの神像・仏像など、仏教関連の貴重な資料を見学できます。また、開放されている奉安堂には、門徒であった小山田繁蔵海軍中将が明治・大正・昭和の三代にわたり侍従武官長を務めた功績により、大正天皇逝去の際に皇室より下賜されたという海軍通常礼服など、天皇ゆかりの品々が展示されています。
境内には『碧祥寺博物館』があり、冬季の生活用具・民具・信仰資料など1万数千点が五つの資料館で展示され、国の重要有形民俗文化財に指定されています。
特に注目すべきは、杉材をくり抜いて作られた丸木舟で、約100年前に河川用として使われた、日本で唯一現存する資料とされています 。

また、マタギの狩猟用具は全国的に散逸する中で、前住職の太田祖電さんが秋田・岩手から蒐集した486点が極めて貴重な資料として保存されており、県内外から多くの見学者が訪れます 。


『雨ニモマケズ』で有名な宮沢賢治は岩手県花巻市の出身です。古くからマタギといえば熊が知られていますが、彼の作品には熊とマタギの関係を描いた童話『なめとこ山の熊』があります 。
明治26年、俳聖正岡子規は『奥の細道追体験』の旅に出発し、『はてしらずの記』を著しました。8月には秋田県美郷町から山を越えて西和賀町に入り、湯本温泉に投宿しました。その際に詠んだ句碑が境内に建っています。
蜩 や 夕日の里は 見えながら
山の温泉や 裸の上の 天の川