2026年 あけましておめでとうございます

熊が2025年の『今年の漢字』に選ばれるとは、昨年の今頃は誰も予想していなかったと思います。夏以降、全国で熊の出没と人身被害が相次ぎ、死傷者数は過去最多を記録しました。農作物の被害も深刻で、各地でイベントの中止も相次ぎました。 なぜ、これほど急に被害が増えたのか。さまざまな要因が指摘されていますが、その理由は決して一つに絞り込めるものではないようです。
人間が快適に暮らせるよう作られた町に、命を脅かす存在が突如として侵入してくる。身近に熊が現れた地域の方々の不安は、計り知れないものだと思います。
でも、熊の立場になって想像してみれば、「人間が住んでいる場所には入りません」という約束を交わした覚えなどなく、どこかへ行こうとしたらたまたま道路を横切っていたり、美味しそうな果実の匂いに誘われて歩いていたら、そこが集落だったというだけのことかもしれません。彼らもまた、ただ懸命に生きているだけなのでしょう。
自分を襲うものから逃れるために、穴を掘って隠れることが精一杯な他の動物とは異なり、人間は心配事をできる限り減らそうと、環境を自分たちに都合よく作り変え続けてきました。そして、危害を及ぼす可能性のあるものや、思い通りにならないものから自分を守るため、「境界線」を築こうとします。
しかしその境界線は、人間と動物の間だけでなく、利害の合わない人間同士の間にも、いつの間にか引かれてしまうようです。
私たちは、安心したいと願う一方で、誰かと分かり合いたいとも願う生き物です。安心を求めて他者との摩擦を避け続けていくと、ふとした瞬間に、独りぼっちになっている自分に気づくことがあります。 分かり合えないと感じた時、すぐに境界線を引いてしまう前に、まずは相手の立場から物事を見てみようと試みること。そこから始める大切さを、今年の漢字である「熊」が教えてくれたような気がします。

本年もよろしくお願いします。西念寺を皆さまにとって仏教の教えに触れていただく場としていただけますようお願い申し上げます。(住職)

