みんなのひとこと:我々はどこから来たのか? どこへ行くのか?

釋慈孝(千葉)さんより

コロナ禍が未だ続き、まだまだ気は抜けない状況ですが、ワクチン接種が全国的に急ピッチで進められており、やっと不自由な日常から抜け出せそうな希望が見えてきました。

これまで毎日、コロナ関連のニュースばかりで気分が滅入る日が多く、明るいニュースもほしいところですが、実は多くの明るい話題もありました。その一つが小惑星探査機「はやぶさ2」の帰還です。地球を離れて6年の歳月を掛け、小惑星「りゅうぐう」から石や砂を採取し往復52億キロもの長い飛行を経て、昨年12月、地球に帰ってきたのです。その完璧な制御技術は世界から絶賛され、日本でも皆が一時コロナ禍を忘れてこの快挙に感動し歓喜しました。

この世界に冠たる技術と同時に、私がもう一つ感動したのは、「はやぶさ2」が持ち帰った玉手箱(カプセル)の中味を分析すると、「生命の起源」「地球の成り立ち」に関する新たな発見があるかもしれないという話です。

実は「生命の起源」と聞いて頭に浮かんだのは、フランスの画家、ポール・ゴーギャンの「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」と題する絵画です。ゴーギャンがタヒチで描いた代表作と言われる有名な絵ですが、私はこの絵画そのものよりもこの絵の題名が妙に気になり、記憶に残っています。この言葉は人類にとって〝根源的な問い?〝永遠の謎?と言えるものですが、この探求に人類は生命科学等、様々な科学的アプローチで取り組んできました。現在も続けられていますが、「はやぶさ2」もその一翼を担っていたことを知り、驚いたのでした。

一方、人類は別の方法でも古くからこのテーマに取り組んでいます。宗教的アプローチとでも言いましょうか、ある宗教では「神」が天地を創造、人間も「神」が創られたと信じ、信者の人が亡くなると、「神に召された」と言います。また、仏教の浄土真宗では「浄土より生まれ、浄土に還る」「〝いのち?の海から来て、〝いのち?の海に還る」と説かれます。私たち真宗門徒はこの教えを聞いて現世を生きています。これが信仰の世界であり、精神世界の考え方だと言えます。

「我々はどこから来たのか?」その解を求め、これからも科学的アプローチは最先端のテクノロジーを駆使して続けられていくでしょう。しかし、科学技術で仮に「生命の起源」が解明されたとしても、それは我々の心を救うことになるのかという疑問も湧いてきます。

また、ゴーギャンの〝問い?に対し、「我々は〝いのち?の海から来て、〝いのち?の海に還る」という〝答え?が既にあることに気付かされました。しかし、私たちにとってより大事なことは、一人ひとりが戴いている〝いのち?が掛け替えのない〝いのち?、願われている〝いのち?であることを自覚し、今をしっかり生きるということではないでしょうか。先に亡くなった愛する人も諸仏となり、きっとそう願っているはずだと法話でも語られます。

過去の「おしらせ」法話特集の再読を含め、これからも仏様の智慧、教えに出遇わせて頂く「聞法」に励んで参りたいと思っております。